東京高等裁判所 昭和37年(行ナ)89号 判決
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〔判決理由〕(本件審決を取り消すべき事由の有無について)
二 原告は本件審決は、本願発明がジアセチレンを最先に除去することにより、温度、圧力の限定と相まち、爾後の処理工程における爆発の危険を防止できるという特段の効果を看過誤認した点において違法として取り消されるべきものである旨主張するが、原告の右主張は、理由がないものというほかはない。すなわち、本願発明の要旨及び引用例の技術内容、したがつて、両者の一致点及び相違点が本件審決認定のとおりであること、並びに、一般に、溶剤を使用してガス状混合物よりその成分を分離回収する場合、それぞれの成分の溶剤に対する性質に応じて圧力又は温度を適宜選択して溶剤に吸収させ、あるいは離脱させることが、本件審決の認定するとおり、化学工業上の常套手段であることは、当事者間に争いのないところであり、これらの事実に、原告の自認する本願明細書に、前掲本願発明の要旨に示すような順序、温度圧力でガス状混合物から各成分を分離することによる爆発の危険防止という特段の効果の記載のない事実を参酌考量すると、本願発明は、結局、引用例に開示された技術から当業者の容易に推考しうる程度のものと認めるのが相当であり、これを左右するに足る適確な証拠資料はない。原告は、本願発明においては、ジアセチレンを最先に分離することにより、他の温度及び圧力の限定と相まち、爾後の工程における爆発の危険を防止できるという特段の効果を奏しうるものである旨主張し、ジアセチレンが爆発性を有することは本願出願前公知の事実であることは被告の認めて争わないところであるが、本願発明がこのような効果を期待したものであることは、本願明細書の記載からも、これを窺いえないばかりでなく、本願発明の対象であるガス状混合物中のジアセチレンを除くその余の成分も、爆発を起しうる性質を有するものであることは化学工業上周知の事実であるから(このことは、本件弁論の全趣旨に徴し明らかである。)、本願発明においてジアセチレンを最先に除去することをもつて、爾後の工程における爆発の危険を一切防止しうるものとすることはできないのは勿論、これをもつて、本願発明に特有の効果とすることはできない。また、原告の主張する爾余の成分の、本願発明における分離順序による効果にしても、炭酸ガスについて周知の性質に着目した、いわば当業者の当然選択するであろう順序による当然の効果にすぎないと認められるから、これをもつて、本願発明に特有の効果とすることは到底できない。(むすび)
三 叙上のとおりであるから、その主張の点に判断を誤つた違法があることを理由に本件審決の取消を求める原告の本訴請求は、理由がないものといわざるをえない。よつて、これを棄却する。(三宅正雄 杉山克彦 楠賢二)